安全・衛生に関するQ&A 1.石綿(アスベスト) 港湾貨物運送事業労働災害防止協会、港湾労災防止協会、港湾災防、〒108-0014東京都港区芝5-35-1、産業安全会館6階 TEL03-3452-7201

Q&A:1.石綿(アスベスト)

石綿(アスベスト)とは一体何ですか。

 石綿(アスベスト)は天然に産する繊維状けい酸塩鉱物の総称で、角閃石系石綿である、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)等と近年主に使われてきた蛇紋石系石綿のクリソタイル(白石綿)があります。

耐熱性、絶縁性、耐摩耗性に優れているため、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材等で使用されていました。

石綿は肉眼で見ると綿のように柔らかく見えますが、拡大して見ると針状の結晶であり、その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機等での使用や飛散しやすい吹付け石綿の除去等において所要の措置を取らないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあります。以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。

平成7年に石綿のうち、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)を含有する物の製造、輸入、使用等が禁止され、平成16年には、クリソタイル(白石綿)等の石綿を含有する石綿セメント円筒、住宅屋根用化粧スレート等の製品の製造、輸入、使用等が禁止されています。

石綿は、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法等で予防や飛散防止等について規定されています。

石綿が原因で発症する疾病は何がありますか。

 石綿(アスベスト)の繊維は、肺繊維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています(WHO報告)。石綿による健康被害は、石綿を扱ってから長い年月を経て出てきます。例えば、中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いといわれています。仕事を通して石綿を扱っている方、あるいは扱っていた方は、定期的に健康診断を受けられることをお勧めします。現に仕事で扱っている方(労働者)の健康診断は、事業主にその実施義務があります(労働安全衛生法第66条)。

石綿を吸うことにより発症する疾病としては、主に次のものがあります。

(1) 石綿(アスベスト)肺石綿肺は、肺が繊維化してしまう肺繊維症(じん肺)という病気の一つです。
  肺の繊維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられますが、石綿のばく露によっておきた肺繊維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。石綿粉じんを10年以上吸入した者に起こるといわれており、潜伏期間は15~20年といわれています。石綿ばく露をやめたあとでも進行することもあります。
(2) 肺がん
 石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分には解明されていませんが、肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。また、喫煙と深い関係にあることも知られています。石綿ばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。
 治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療等があります。
(3) 悪性中皮腫
 肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃等の臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍であり、我が国でも石綿ばく露による中皮腫は、欧米と同様に報告数が増加しています。
 若い時期に石綿を吸い込んだ方が悪性中皮腫になりやすいことが知られ、潜伏期間は20~50年といわれています。
 治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療等があります。

石綿の健康診断について:石綿を扱う作業に従事していた場合は、無料で定期的に健康診断を受けることができる健康管理手帳制度があると聞きました。どこで手続きをすればよいのですか。また、既に当該事業場を退職している場合はどうなりますか。

 過去に石綿を取り扱う作業に従事し、離職の際又は離職後の健康診断で、一定の所見(両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚があること。)が認められる場合には、住所地の(離職の際は、事業場の)管轄の都道府県労働局に健康管理手帳の交付申請書(様式第7号)を提出することにより、健康管理手帳の交付がされます。手帳が交付された場合には、その後、無料で指定の医療機関で健康診断を受けることができます。

なお、粉じん作業には石綿を取り扱う作業も含まれているため、じん肺に規定する粉じん作業に該当する作業に従事された方については、以上の交付要件のほかにじん肺法の規定により決定されたじん肺管理区分が管理2又管理3である場合にも健康管理手帳が交付されます。

健康管理手帳の申請は、所属していた事業場が倒産等により現在、存在していなくても、申請することができます。

申請方法等の詳細につきましては、お近くの都道府県労働局、労働基準監督署にお問い合わせ下さい。 

労災の手続きについて: 1.医師に中皮腫と診断され、労災が適用されるといわれました。どのような手続きを行えばよいのですか。

 業務上、石綿を吸入し、それが原因で石綿疾患に罹ったり、亡くなられた場合には、労災としての認定を受ければ、労災保険の給付を受けられます。

労災保険の給付には、治療費の給付に当たる療養補償給付や治療するために会社を休んだ場合に支給される休業補償給付等がありますが、いずれの場合も請求書に必要事項を記入して、医療機関又は労働基準監督署にその請求書を提出して手続きを行います。

詳しくは、都道府県労働局又は労働基準監督署にご相談ください。 

労災の手続きについて: 2.既に退職していますが、在職中は石綿を取り扱う作業に従事していました。中皮腫や肺がんを発症した場合、退職後でも労災認定は受けられるのでしょうか。

 労災保険給付を受ける権利は、退職しても変更されません。したがって、退職された後であっても、労災認定を受けることができますが、休業補償給付は2年、障害や遺族補償給付は5年間の請求の時効があります。

詳しくは、都道府県労働局又は労働基準監督署にご相談ください。 

労災の手続きについて: 3.石綿を取り扱う作業を行っている事業場では、どのような措置を講じればよいでしょうか。

 石綿障害予防規則では、石綿が使用された建築物等の解体等の作業、石綿が吹き付けられた建築物等における業務については、石綿等の使用の有無の調査、作業計画の作成、労働基準監督署への届書の提出、特別教育の実施等の特別措置を設けていますが、それ以外の石綿等を製造し又は取り扱う作業についても、主に次のような対策を講じることが義務づけられています。

・ 石綿粉じんが発散する屋内作業場については、原則として粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならないこと。
・ ただし、密閉設備、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なときは、全体換気装置を設け、又は当該石綿等を湿潤な状態にする等労働者の健康障害を予防するために必要な措置を講じること。
・ 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者のうちから石綿作業主任者を選任し、作業方法の決定、労働者の指揮等の業務を行わせなければならないこと。
・ 石綿等を切断、穿孔、研磨等する際に、労働者にばく露を防止するための呼吸用保護具、作業衣又は保護衣を着用させ、石綿等を湿潤な状態のものにしなければならないこと。
・ 石綿等を製造し、又は取り扱う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、空気中の石綿の濃度を測定し、作業環境の状態を評価し、改善しなければならないこと。測定の記録は30年間保存しなければならないこと。
・ 常時石綿等を製造し、又は取り扱う作業に従事する(かって従事し、現に雇用している者も含む。)労働者について、6か月以内ごとに1回、特殊健康診断を実施しなければならないこと等。


労災の手続きについて: 4.建築物(事務所、店舗、倉庫等)は石綿(アスベスト)の危険性がありますか。

建築物においては、

・ 耐火被覆材等として吹き付け石綿
・ 屋根材、壁材、天井材等として石綿を含んだセメント等を板状に固めたスレートボード等が使用されている可能性があります。

  石綿は、その繊維が空気中に浮遊した状態にあると危険であるといわれています。すなわち、吹きつけた石綿が露出している場合、劣化等によりその繊維が飛散するおそれがありますが、板状に固めたスレートボードや、天井裏・壁の内部にある吹付け石綿からは、通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。

  吹き付け石綿は、比較的規模の大きい鉄骨造の建築物の耐火被覆として使用されている場合がほとんどです。建築時の工事業者や建築士等に使用の有無を問い合わせてみるなどの対応が考えられます。

労災の手続きについて: 5.建築物(事務所、店舗、倉庫等)に吹き付け石綿が使用されている場合においては、どうしたらよいですか。

 石綿障害予防規則において、吹き付けられた石綿が劣化等により粉じんを発散させ、労働者がその粉じんに暴露するおそれがあるときは、除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならないこととされています。

石綿障害予防規則等、関係法令に従って適切に対処してください。 

港湾貨物運送事業労働災害防止規程の解説

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港湾貨物運送事業労働災害防止規程

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